社会保険料を安くする方法7選 | 合法的な節約テクニック
毎月の給与から天引きされる社会保険料は、月給30万円の場合で約4.5万円にもなります。合法的に社会保険料を抑え、手取りを増やすための具体的な方法を解説します。
1. 社会保険料の仕組みのおさらい
社会保険料を節約するためには、まず保険料がどのように決まるかを理解しておく必要があります。会社員が負担する社会保険料は、主に健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の3つ(40歳以上は介護保険料を含む4つ)で構成されています。
健康保険料と厚生年金保険料は、標準報酬月額という金額をベースに計算されます。標準報酬月額とは、実際の月給をそのまま使うのではなく、一定の幅を持った「等級」に当てはめた金額のことです。例えば月給が29万円でも31万円でも、同じ「30万円」の等級に分類されることがあります。
この標準報酬月額は、毎年4月・5月・6月の3か月間の報酬の平均をもとに決定されます。この手続きを定時決定(算定基礎届)といい、決まった等級はその年の9月から翌年8月まで1年間適用されます。
重要なのは、「報酬」には基本給だけでなく、残業代・通勤手当・各種手当がすべて含まれるという点です。つまり、4〜6月に残業が多かったり手当が増えたりすると、標準報酬月額が上がり、1年間の保険料が高くなります。
一方、雇用保険料は標準報酬月額ではなく、毎月の実際の給与総額に0.6%を掛けて計算されるため、等級の影響を受けません。
2. 4〜6月の残業を減らす
社会保険料を節約する最もシンプルかつ効果の大きい方法が、4月・5月・6月の3か月間の残業を抑えることです。前述のとおり、この期間の報酬平均で標準報酬月額が決まるため、この時期だけ意識的に残業を減らすことで等級を下げられる可能性があります。
例えば月給25万円の人が、4〜6月に毎月5万円の残業代を受け取ると、報酬月額は30万円になります。一方、残業を抑えて報酬月額を26万円に収めれば、標準報酬月額の等級が1〜2段階下がる場合があります。
具体例:月給25万円の場合
- 残業多め(報酬月額30万円)→ 標準報酬月額30万円 → 社会保険料 約44,220円/月
- 残業少なめ(報酬月額26万円)→ 標準報酬月額26万円 → 社会保険料 約38,324円/月
- 差額:約5,896円/月 × 12か月 = 年間約70,752円の節約
ただし、残業を減らすと当然その月の手取り自体は減ります。年間トータルで得になるかどうかは、残業代と社会保険料の差額を比較して判断してください。また、業務上どうしても残業が必要な時期もあるため、無理な調整は禁物です。
なお、4〜6月に残業を減らしても、7月以降に残業が増えること自体は標準報酬月額に影響しません(随時改定の条件を満たさない限り)。このため、繁忙期を7月以降にずらせる職種であれば、特に効果的な方法といえます。
3. 随時改定(月額変更届)を活用する
標準報酬月額は年に1回の定時決定で決まりますが、固定的賃金(基本給・役職手当・通勤手当など毎月決まった額が支給されるもの)が変動し、一定の条件を満たした場合には、年度の途中でも等級が見直されます。これを随時改定(月額変更届)といいます。
随時改定が行われる条件は以下の3つをすべて満たす場合です。
- 固定的賃金に変動があった
- 変動月を含む3か月間の報酬平均と現在の標準報酬月額に2等級以上の差がある
- 3か月とも支払基礎日数が17日以上ある
例えば、転居により通勤手当が月2万円減った場合、変動後3か月の報酬平均が下がり、2等級以上の差が生じれば随時改定が適用され、標準報酬月額が引き下げられます。
逆に昇給により基本給が上がった場合は、随時改定で等級が上がり保険料が増えることもあります。ただし、昇給のタイミングが年度途中であれば、定時決定を待たずに適正な等級になるため、将来の年金受給額にも正しく反映されます。
随時改定は会社が届け出るものですが、自分の給与に変動があった場合は、人事・総務部門に確認しておくとよいでしょう。特に引っ越しで通勤手当が変わった場合は見落とされがちなので注意が必要です。
4. 通勤手当と社会保険料の関係
意外と知られていないのが、通勤手当は社会保険料の計算に含まれるという点です。所得税の計算では通勤手当は一定額まで非課税ですが、社会保険料の算定では非課税の恩恵は受けられず、報酬月額にフルで加算されます。
例えば、月15,000円の通勤手当が支給されている場合、年間で約26,000円ほど社会保険料が高くなる計算です(本人負担分のみ、保険料率約14.5%で試算)。
通勤手当による社会保険料の増加目安
| 通勤手当(月額) | 社会保険料の年間増加額(概算) |
|---|---|
| 5,000円 | 約8,700円 |
| 10,000円 | 約17,400円 |
| 20,000円 | 約34,800円 |
| 30,000円 | 約52,200円 |
会社の近くに引っ越して通勤手当を減らせば、社会保険料も下がります。さらに、通勤時間の短縮による生活の質の向上というメリットもあります。テレワーク中心の働き方に切り替えて通勤手当が実費精算になった場合も、報酬月額が下がる可能性があります。
ただし、引っ越し費用や家賃の差額と社会保険料の節約額を比較して、トータルで判断することが大切です。
5. iDeCo・企業型DCで社会保険料を間接的に節約
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC(企業型確定拠出年金)は、掛金が所得控除の対象となるため、所得税・住民税の節税に大きな効果があります。ただし、社会保険料への影響は制度によって異なる点に注意が必要です。
iDeCoの掛金は給与から天引きされるわけではなく、個人の口座から引き落とされます。そのため、報酬月額には影響せず、社会保険料は直接的には変わりません。しかし、所得税・住民税が軽減されるため、トータルの手取りは増えます。
一方、企業型DCの「選択制」(ライフプラン手当など)を導入している企業の場合は事情が異なります。選択制DCでは、給与の一部を掛金として拠出するため、見かけ上の報酬月額が下がり、標準報酬月額の等級が下がって社会保険料も減る可能性があります。
選択制DC(月2万円拠出)の効果例:月給30万円の場合
- 掛金拠出前:報酬月額30万円 → 社会保険料 約44,220円/月
- 掛金拠出後:報酬月額28万円 → 社会保険料 約41,272円/月
- 社会保険料の年間節約額:約35,376円
- さらに所得税・住民税の節税効果:年間約48,000円(税率20%の場合)
注意:社会保険料が下がるということは、将来受け取る厚生年金の受給額や傷病手当金・出産手当金の日額も減ることを意味します。目先の節約だけでなく、将来の給付への影響も考慮した上で判断しましょう。
iDeCoの掛金上限は、企業型DCのない会社員の場合は月23,000円です。年間の所得控除額は276,000円となり、所得税率10%・住民税率10%の人なら年間約55,200円の節税になります。社会保険料の直接的な節約にはなりませんが、手取り改善の効果は大きいため、検討する価値は十分にあります。
6. 月給別の社会保険料シミュレーション
月給別に社会保険料の本人負担額がどの程度になるか、令和6年度の料率(協会けんぽ・東京)で試算しました。40歳未満(介護保険料なし)と40歳以上(介護保険料あり)のそれぞれの金額を示しています。
| 月給(万円) | 健康保険料 | 厚生年金 | 雇用保険 | 合計(40歳未満) | 合計(40歳以上) |
|---|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 9,980円 | 18,300円 | 1,200円 | 29,480円 | 31,300円 |
| 25万円 | 12,475円 | 22,875円 | 1,500円 | 36,850円 | 39,125円 |
| 30万円 | 14,970円 | 27,450円 | 1,800円 | 44,220円 | 46,950円 |
| 35万円 | 17,465円 | 32,025円 | 2,100円 | 51,590円 | 54,775円 |
| 40万円 | 19,960円 | 36,600円 | 2,400円 | 58,960円 | 62,600円 |
| 45万円 | 22,455円 | 41,175円 | 2,700円 | 66,330円 | 70,425円 |
| 50万円 | 24,950円 | 45,750円 | 3,000円 | 73,700円 | 78,250円 |
※ 協会けんぽ(東京)令和6年度の料率で試算。健康保険9.98%(本人4.99%)、厚生年金18.3%(本人9.15%)、雇用保険0.6%、介護保険1.82%(本人0.91%)。標準報酬月額=月給として簡易計算。
月給20万円と50万円では、社会保険料の差は月額で約44,000円、年間で約53万円にもなります。等級が1つ変わるだけでも年間で数万円の違いが生じるため、自分の等級がどこに位置するかを把握しておくことが大切です。
7. やってはいけない違法な節約方法
社会保険料の負担は大きいため、不正な方法で回避しようとするケースが残念ながら存在します。しかし、以下のような手法は違法であり、発覚した場合には重いペナルティが課されます。
以下の方法は絶対に行わないでください
- 給与の分割払い:月給の一部を翌月や賞与として支払い、標準報酬月額を低く見せかける手法。健康保険法・厚生年金保険法に違反し、事業主に6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
- 偽装請負・偽装業務委託:実態は雇用関係にあるにもかかわらず、業務委託契約を装って社会保険への加入を回避する手法。労働基準法・職業安定法に違反するだけでなく、労災事故が発生した場合に労働者が保護されないリスクがあります。
- 虚偽の届出:実際より低い報酬額で算定基礎届や月額変更届を提出する行為。年金事務所の調査で発覚した場合、最大2年間分の保険料を遡って徴収され、延滞金も加算されます。
- 社会保険未加入の事業所で働く:法人事業所や常時5人以上の従業員がいる個人事業所は社会保険への加入が義務です。未加入の事業所は年金事務所から加入指導を受け、最終的には強制加入となります。
社会保険料は確かに大きな負担ですが、その分だけ将来の年金・医療・介護のセーフティネットとして機能しています。節約を考える際は、必ず合法的な方法を選択してください。本記事で紹介した「4〜6月の残業調整」「随時改定の活用」「iDeCo・企業型DC」などは、いずれも制度の範囲内で認められた方法です。
参考資料
- 定時決定(算定基礎届)(日本年金機構)
- 随時改定(月額変更届)(日本年金機構)
- 保険料額表(全国健康保険協会)
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)
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