社会保険の加入条件 | パート・アルバイトの適用拡大を解説
パートやアルバイトでも社会保険に加入する必要があるのか?2024年の適用拡大で変わった加入条件と、加入した場合のメリット・デメリットを詳しく解説します。
1. 社会保険の加入条件(正社員・パートの違い)
社会保険(健康保険・厚生年金)は、法人の事業所や常時5人以上の従業員がいる個人事業所(一部業種除く)が適用事業所となり、そこで働く従業員が加入対象になります。
正社員の場合
正社員は原則として全員が加入対象です。入社日から社会保険に加入します。
パート・アルバイトの場合
従来、パート・アルバイトは「正社員の4分の3以上」の労働時間・日数を満たす場合に加入対象でした。具体的には以下の通りです。
| 条件 | 基準 | 例(正社員が週40時間の場合) |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間 | 正社員の3/4以上 | 週30時間以上 |
| 月の所定労働日数 | 正社員の3/4以上 | 月16日以上 |
これに加え、2016年から段階的に「短時間労働者」への適用拡大が進んでいます。
2. 2024年の適用拡大(51人以上企業)
短時間労働者への社会保険の適用拡大は、以下のスケジュールで段階的に進められてきました。
| 時期 | 対象企業の規模 | 対象人数(推計) |
|---|---|---|
| 2016年10月〜 | 従業員501人以上 | 約25万人 |
| 2022年10月〜 | 従業員101人以上 | 約45万人 |
| 2024年10月〜 | 従業員51人以上 | 約65万人 |
2024年10月からは従業員51人以上の企業にまで拡大されました。これにより、中小企業で働くパート・アルバイトにも大きな影響が出ています。
なお、ここでいう「従業員」は、すでに社会保険に加入している被保険者数(フルタイム+週30時間以上のパート)を指します。
3. 106万円の壁と加入要件の詳細
適用拡大の対象企業で働く短時間労働者は、以下の4つの条件をすべて満たす場合に社会保険への加入が義務付けられます。
| 条件 | 基準 | 補足 |
|---|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 契約上の時間で判定 |
| 月額賃金 | 8.8万円以上 | 残業代・賞与・通勤手当は除く |
| 雇用期間の見込み | 2か月超 | 2022年10月から緩和 |
| 学生でない | -- | 休学中・夜間学生は加入対象 |
月額賃金8.8万円 × 12か月 = 約106万円であるため、「106万円の壁」と呼ばれています。ただし、正確には「月額8.8万円」が基準であり、年収で判定するわけではありません。
注意点:月額賃金に含まれないもの
- 残業代(時間外手当)
- 賞与
- 通勤手当
- 臨時に支払われる賃金
基本給+諸手当(家族手当・役職手当等)で8.8万円以上かどうかを判定します。
4. 加入するメリット・デメリット
メリット
- 将来の年金が増える:厚生年金に加入することで、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。例えば月額8.8万円で20年加入した場合、年金が年額約11.6万円増えます
- 傷病手当金:病気やケガで働けない場合、給与の約2/3が最長1年6か月支給されます(国民健康保険にはない制度)
- 出産手当金:産前42日・産後56日の間、給与の約2/3が支給されます
- 障害厚生年金:障害等級3級でも年金を受給でき、国民年金のみの場合より保障が手厚くなります
- 保険料の半分は会社負担:社会保険料は労使折半のため、自分で国民健康保険+国民年金を払うよりも有利なケースが多いです
デメリット
- 手取りが減る:月額8.8万円の場合、社会保険料の本人負担は約1.2万円/月。年間約15万円の負担増です
- 配偶者の扶養手当がなくなる場合がある:会社によっては、扶養から外れると配偶者手当(家族手当)が支給されなくなります
月額8.8万円で加入した場合の保険料(目安)
健康保険料:約4,391円/月(東京・協会けんぽ)
厚生年金保険料:約8,052円/月
合計:約12,443円/月(年間約14.9万円)
5. 130万円の壁との違い
「106万円の壁」と「130万円の壁」は混同されやすいですが、それぞれ別の制度に基づいています。
| 項目 | 106万円の壁 | 130万円の壁 |
|---|---|---|
| 根拠 | 自分の勤務先の社保に加入 | 配偶者等の社保の扶養から外れる |
| 対象企業 | 従業員51人以上 | 企業規模に関係なし |
| 判定基準 | 月額賃金8.8万円以上 等 | 年収見込み130万円以上 |
| 超えた場合 | 勤務先の健保・厚生年金に加入 | 自分で国保・国民年金に加入 |
| 保険料負担 | 労使折半(会社が半額負担) | 全額自己負担 |
106万円の壁に該当しない企業(従業員50人以下)で働く場合は、130万円までは配偶者の扶養に入れます。逆に、51人以上の企業で条件を満たす場合は、130万円より先に106万円の壁に当たることになります。
130万円を超えて自分の勤務先の社保に入れない場合は、国民健康保険+国民年金に加入することになり、保険料は全額自己負担です。この場合の負担は106万円の壁で社保に入るよりも重くなります。
6. 扶養内 vs 社保加入 -- 損益分岐点シミュレーション
扶養内(年収130万円未満)で働く場合と、社保に加入して働く場合の手取りを比較します。配偶者の扶養に入っている前提です。
| 年収 | 社保加入 | 社保料(年額) | 税金(年額) | 手取り(年額) |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | なし(扶養内) | 0円 | 0円 | 約100万円 |
| 120万円 | なし(扶養内) | 0円 | 約2.6万円 | 約117万円 |
| 130万円 | あり | 約19万円 | 約2.3万円 | 約109万円 |
| 150万円 | あり | 約22万円 | 約3.4万円 | 約125万円 |
| 170万円 | あり | 約25万円 | 約5.2万円 | 約140万円 |
※ 東京都・協会けんぽ・40歳未満・配偶者控除の影響は考慮せず、概算で計算しています。
扶養内で年収120万円の手取り約117万円を上回るには、社保に加入した上で年収約160〜170万円稼ぐ必要があります。この金額が損益分岐点の目安です。
結論
- 年収130〜150万円のゾーンは「働き損」になりやすい
- 年収170万円以上なら手取りで扶養内を確実に上回る
- 将来の年金増額・傷病手当金を考慮すれば、損益分岐点はさらに下がる
参考資料
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